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穂高・涸沢の雪渓が59年で縮小 2022年から4年連続で秋に消失

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真夏でも雪が残る、北アルプスの登山の名所「涸沢(からさわ)」。その白い雪の広がりが、半世紀あまりの間に確実に小さくなっていました。しかも2022年から2025年までは、4年続けて秋までに雪がすっかり消えていたのです。

この研究は、国立環境研究所と信州大学のチームによるものです。論文は日本雪氷学会の学会誌『雪氷』88巻5号に2026年9月7日付で掲載され、国立環境研究所が10月15日に発表しました。

ニュース本体:毎年およそ947平方メートルずつ縮小

調査の舞台は、長野県松本市にある穂高岳の涸沢です。氷河が削ってできたおわん形の谷「カール」の底で、広さは約400メートル×1000メートル、標高は約2300〜2700メートルあります。ここには、夏を越えて翌年まで残る「多年性雪渓(たねんせいせっけい)」があります。秋から春に積もる雪と、春から秋にとける雪のバランスで大きさが決まり、下流の水を支える「天然の白いダム」とも呼ばれます。

チームは1967年から2025年までの59年間について、雪渓の面積の移り変わりを調べました。その結果、雪渓は1年あたり約947平方メートルの割合で、統計的にはっきりと縮小していました。面積が最も大きかったのは1989年の約13万平方メートル。一方、1999年、2016年、そして2022〜2025年は、秋までに雪渓が消えてしまいました。

原因として考えられたのは、雪がとける時期(5月〜10月前半)の気温の上昇です。岐阜県の高山や富士山など複数の地点で気温がはっきり上がっており、気温が高い年ほど雪渓が小さいという強い関係が見られました。意外なことに、冬に降る雪の量には、地点に共通する減少の傾向は見られませんでした。「雪が減った」よりも「とける量が増えた」ことが、長い目で見た縮小の主な原因と考えられています。

年ごとの大きな変化には、雪がとける時期の気温に加えて、冬の季節風が日本海側から運ぶ雪や、本州の南を通る「南岸低気圧」が太平洋側から運ぶ雪も関係していました。

独自リサーチ:山小屋や登山者の写真が「59年の記録」を支えた

この研究のすごさは、データの集め方にあります。59年分の記録は、1つの観測装置で取られたものではありません。林野庁や国土地理院の空中写真、信州大学自然科学研究会が1968年から19年間続けた現地での測量図、国立環境研究所が2011年から山小屋などに置いた定点カメラ、ランドサットなどの人工衛星の画像、さらに山小屋の関係者や登山者が持っていた個人の写真まで、8種類・106点の画像や図面を集めました。

それらを地図上で1つ1つ位置を合わせ、ななめから撮った写真は新しい手法で真上から見た形に直して、面積を比べられるようにしたのです。研究チームも、紙の資料や古い写真といった過去の記録を掘り起こして残すことの大切さを強調しています。

実は、日本の雪渓の中には「氷河」と認められたものもあります。2012年、立山カルデラ砂防博物館の研究チームの調査をもとに、立山の御前沢(ごぜんざわ)雪渓と、剱岳の三ノ窓雪渓・小窓雪渓が、日本で初めて現役の氷河と認められました。その後、2018年に内蔵助(くらのすけ)雪渓、池ノ谷雪渓、カクネ里雪渓が、2019年には唐松沢雪渓が加わり、日本の氷河は7つになっています。雪渓の変化を見守ることは、これらの貴重な氷河の未来を考えることにもつながります。

世界に目を向けると、氷河の縮小はさらに深刻です。国連のユネスコと世界気象機関(WMO)は、2025年を「国際氷河保全年」と定めました。WMOによると、世界の氷河は2023年に記録が残る50年間で最大の量の氷を失いました。また、20億人以上が氷河や山の雪・氷からの水に頼って暮らしています。涸沢の雪渓の縮小は、世界で起きている変化の「日本版」ともいえるでしょう。

日本への影響:水、山の生き物、登山の安全

まず心配なのは水です。雪渓は夏の間、少しずつとけて川に水を送り出します。この「白いダム」が小さくなれば、夏から秋にかけて川に流れる水の量やタイミングが変わるおそれがあります。北アルプスから流れ出す川は、ふもとの農業や暮らしを支えています。

次に、高山の生き物です。チームは、たまった定点カメラの画像を使って、高山帯の植物や生態系への影響を調べることも今後の課題に挙げています。雪がいつ消えるかは、高山植物が花を咲かせる時期にも関わるため、雪渓の変化は山の生き物全体に広がる可能性があります。

登山者にとっても無関係ではありません。涸沢は、夏は雪渓、秋は紅葉で多くの人が訪れる場所です。雪の状態が年ごとに大きく変われば、歩くルートや装備の判断も変わってきます。

意見:「記録を残す人」がいたからこそ分かった変化

この研究で一番価値があると感じるのは、研究者だけでなく、山小屋の人や登山者が撮った写真までが科学のデータとして生かされた点です。59年前には、今のような衛星画像も定点カメラもありませんでした。それでも、山を愛する人たちが残した記録が、気候変動の確かな証拠になったのです。

一方で、冬の雪の量に共通の減少傾向が見られなかったという結果は、「暖かくなったから雪が降らなくなった」という単純な話ではないことを示しています。年ごとの変動も大きく、1年だけの様子で判断するのは危険です。だからこそ、研究チームが言うように、観測を長く続け、観測地点を増やしていくことが欠かせないと考えます。

4年連続で雪渓が消えたことは重い事実です。このままとける時期の気温が上がり続ければ、「夏を越す雪」が当たり前ではなくなる日が来るかもしれません。登山者が撮る1枚の写真も、未来の研究の役に立つ可能性があると思います。

まとめ

国立環境研究所と信州大学のチームは、穂高岳・涸沢の多年性雪渓が1967年からの59年間で、1年あたり約947平方メートルずつ縮小していたことを明らかにしました。主な原因は雪がとける時期の気温の上昇とみられ、2022〜2025年は4年続けて秋までに雪渓が消えました。日本に7つある氷河や、世界の氷河の行方とも重なるテーマです。次に涸沢を訪れたら、雪渓の大きさにも注目してみてください。

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【出典・参考】
https://www.nies.go.jp/pr/news-and-updates/2026/20261015-1.html
https://doi.org/10.5331/seppyo.88.5_381
https://tabi-mag.jp/japanese-glacier/
https://wmo.int/media/news/unesco-and-wmo-launch-international-year-of-glaciers-preservation-2025

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