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「次の氷期」は2000年前に始まっていた?温暖化が止めたと最新研究

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「次の氷河期はいつ来るのか」。そんな問いに、意外な答えが出されました。カナダ北極圏に残る氷のかたまりを調べたところ、次の氷期はすでに約2000年前、古代ローマの初代皇帝アウグストゥスのころに始まりかけていて、それを止めたのが人間による温暖化だった、というのです。

研究は、米コロンビア大学ラモント・ドハティ地球観測所のニコラス・ヤング氏やヨルグ・シェーファー氏らのチームが、10月22日に学術誌『サイエンス』に発表しました。

ニュース本体:巨大氷床の「最後のかけら」が再び育っていた

舞台は、カナダ・ヌナブト準州のバフィン島中部にある「バーンズ氷帽」です。氷帽とは、山や高原をおおう、氷床より小さな氷のかたまりのことです。広さは約5900平方kmで、アメリカのデラウェア州ほどあります。

この氷帽は、かつての「ローレンタイド氷床」の最後の生き残りです。ローレンタイド氷床は、約9万5000年前から2万年前ごろまでカナダの大部分とアメリカ北部をおおい、最も大きかったときには北極圏の北から今のイリノイ州まで広がり、厚さは場所によって3km以上もありました。最後の氷期は約1万1700年前に終わり、氷床は大きく縮みました。

チームは、氷の下に閉じこめられていた植物を、放射性炭素(炭素14)を使った年代測定で調べました。バーンズ氷帽は岩盤に凍りついていてほとんど滑らないため、氷が広がったときに押しつぶされた植物が、そのままの形で残っています。植物が枯れた年代を調べれば、「いつ氷におおわれたか」が分かるのです。

その結果、氷帽は約3000年前に最も小さくなったあと、約2000年前から再び大きくなり始めていたことが分かりました。成長は寒い時期に合わせて段階的に進み、最も大きく広がったのは、北半球が寒かった「小氷期」の1800年ごろ(前後200年)でした。チームは、この再成長こそが次の氷期の始まりだったと主張しています。

1960年ごろに流れが逆転

ところが、氷帽は1960年ごろまで最大の大きさを保ったあと、縮み始めました。夏にとける量が、冬に積もる雪の量を上回るようになったのです。2022年までに氷のふちは200〜800m後退し、雪が残る部分の割合は1960〜80年には約35%あったのが、2000年代初めには約3%に減りました。2010年以降は、雪が積み重なる場所そのものがなくなっています。モデルによる予測では、氷帽は今後数世紀のうちに完全にとけてしまうとされます。

ヤング氏は「次の氷期はまさに始まろうとしていたのに、止まってしまった」という趣旨を語っています。論文は、今の二酸化炭素の濃度のもとでは、氷期のような状態に戻ることは極めて考えにくいとしています。

独自リサーチ:氷期はなぜ「周期的」に来るのか

氷期と間氷期(今のような暖かい時期)がくり返す主な原因は、地球の公転軌道や地軸の傾きが、数万年単位でゆっくり変わることだと考えられています。セルビアの科学者の名前をとって「ミランコビッチ・サイクル」と呼ばれます。今回の研究でも、軌道の変化で北の高緯度の夏の日差しが弱まり、雪や氷が夏を越しやすくなったことが、再成長の前提だったとしています。

この分野では日本の研究者も大きな役割を果たしてきました。2013年には、東京大学大気海洋研究所の阿部彩子准教授(当時)らが『ネイチャー』誌に、過去100万年の約10万年周期の氷期サイクルは、日射量の変化に対して、特に北米の氷床が大きく反応することで生まれると発表しました。氷期と間氷期で、氷床の量は海面の高さに換算して約130mも変わるとされます。また、日本が南極のドームふじで掘った氷床コア(氷の柱)からは、過去72万年分の気温の変化が読み解かれています。

なお、2025年にはイギリスなどのチームが『サイエンス』誌で、軌道と氷の関係から、氷期に向かう流れへの転換は「約1800年前から現在までの間」に起きたと推定していました。今回の研究チームは、この推定が自分たちの直接の観測とよく一致すると述べています。

日本への影響:「寒くなる心配」より「暖かすぎる心配」

1970年代には、世界で「氷河期が近づいている」という説が話題になったことがありました。ヤング氏によると、寒冷化の流れ自体は本物でしたが、人が気づくほどの変化になるには何千年もかかり、ローレンタイド氷床が大陸サイズに戻るには約3万年が必要だったといいます。

つまり、私たちが生きている間に氷期が来る心配は、もともとほとんどありませんでした。むしろ今回の研究は、数千年〜数万年という自然の大きなリズムさえ、人間の活動がこの200年ほどで変えてしまったことを示しています。日本でも猛暑や豪雨が年々目立つ中、「地球の気候のくせ」そのものが変わりつつあるという視点は、暮らしの備えを考えるうえでも大切です。

意見:「温暖化が氷期を防いだ」は朗報ではない

「温暖化のおかげで氷期が来なくなったなら、良いことでは」と感じる人もいるかもしれません。しかし私は、これを朗報と受け取るのは危ういと考えます。氷期の始まりは何千年もかけてゆっくり進むものでしたが、今の温暖化はわずか数十年〜200年で、その流れを逆向きに変えてしまいました。変化の速さが、自然の変化とはけた違いだという点こそが問題だからです。

一方で、「氷帽の再成長を次の氷期の始まりと呼ぶべきか」については、研究者の間でも意見が分かれる可能性があります。ふつうは海面を数m下げるほどの大きな氷床ができることを氷期の始まりとするからです。また、過去数千年の気温がどう変わってきたかについても、研究によって見方が違います。それでも、氷の下の植物という「動かぬ証拠」から人間の影響を示したことの意味は大きいと思います。

まとめ

コロンビア大学のチームが、カナダ・バフィン島のバーンズ氷帽の下に残る植物の年代を調べ、ローレンタイド氷床の最後のかけらが約2000年前から再び成長していたことを示しました。チームはこれを次の氷期の始まりとみていますが、その成長は1960年ごろに止まり、氷帽は今後数世紀でとけると予測されています。自然の何千年というリズムを、人間がわずかな期間で変えてしまったことを示す研究です。

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【出典・参考】
https://news.climate.columbia.edu/2026/10/22/climate-change-stopped-the-next-ice-age/
https://www.eurekalert.org/news-releases/1148745
https://doi.org/10.1126/science.aed3379
https://www.labrujulaverde.com/en/2026/10/the-next-ice-age-began-under-the-roman-empire-researchers-say-until-global-warming-stopped-it/
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2013/files/research_0808_Abe.pdf
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2017-02-10

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