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世界の氷河3%が氷の損失の半分超 湖で終わる氷河が速くとける

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世界には20万を超える氷河がありますが、そのうちわずか3%ほどの氷河が、世界の氷河から失われている氷の「半分以上」を占めている――。イギリスの研究チームが、そんな分析結果を発表しました。カギを握るのは、氷河の「終わり方」です。

研究は、英バーミンガム大学とリーズ大学のジョー・マラリュー博士、ニコラス・バランド准教授らのチームによるもので、学術誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載されました。バーミンガム大学は10月21日にこの成果を発表しています。

ニュース本体:湖で終わる氷河が、とくに速く氷を失っている

氷河は、山に積もった雪が氷になり、自分の重みでゆっくり流れ下るものです。その先端を「末端(まったん)」と呼びます。多くの氷河は陸の上で終わりますが、なかには先端が湖や海、あるいは海に浮かぶ氷の板(棚氷)に接しているものもあります。

チームは、グリーンランドと南極の巨大な氷床をのぞく世界の氷河21万6502個を、末端が「陸」「湖」「海」「棚氷」のどれに接しているかで分類しました。そのうえで、氷河の流れる速さや形、2000〜2019年の氷の増減のデータと組み合わせ、タイプごとの違いを比べました。末端のタイプで世界中の氷河を分けたのは、これが初めての完全な分類だとされています。

その結果、湖・海・棚氷で終わる氷河は数では全体の3.2%にすぎないのに、大型のものが多いため面積では世界の氷河の半分以上を占め、2000〜2019年に年平均で約1340億トンもの氷を失っていたことが分かりました。これは世界の氷河で失われた氷の半分以上にあたります。

とくに目立ったのが、湖で終わる氷河です。大きさをそろえて比べると、陸で終わる氷河より約57%も速いペースで氷を失っていました。また、気候や大きさ、標高の違いを差し引いても、湖で終わる氷河は陸の氷河より流れが平均約10%速く、海で終わる氷河は約44%速いという結果でした。ただし、海で終わる氷河の氷の減り方は、湖の氷河よりも陸の氷河に近い水準だったといいます。データのある18の地域のうち15地域で、湖で終わる氷河がいちばん速く氷を失っていました。

なぜ湖の氷河がこれほど速くとけるのかは、まだはっきりしていません。先端の氷が崩れ落ちる「分離(カービング)」や、水中で氷がとけることが考えられますが、マラリュー博士は「湖そのものなのか、氷河の大きさや形なのか、その両方なのか」は次の大きな課題だと話しています。

「終わり方」が変わりつつある氷河

研究チームは、温暖化で氷河のタイプそのものが変わり始めていることにも注目しています。北極の一部では、海で終わっていた氷河が後退して陸に上がりつつあります。一方で、陸の氷河の前に融け水がたまって湖ができ、「湖で終わる氷河」に変わる例もあります。前者は流れが遅くなると考えられる一方、後者は氷を失うペースが速まるおそれがあるといいます。

チームは、氷河の将来を予測する多くのモデルが、湖や海で終わる氷河の特徴を十分に取り入れていないと指摘し、今回の分類データを公開して予測の改善に役立ててほしいとしています。

独自リサーチ:世界の氷河湖は30年で約5割増えた

この研究を別の角度から見ると、気になるデータがあります。2020年に学術誌『ネイチャー・クライメート・チェンジ』に発表された研究では、25万枚以上の衛星画像から世界の氷河湖を調べ、1990年から2018年までに氷河湖の数が約53%、面積が約51%、水の量が約48%(約156.5立方km)増えたと報告しています。

氷河がとけて湖が増え、その湖に接した氷河がさらに速く氷を失う――。今回の結果と合わせると、そんな「悪循環」が起きている可能性も考えられます(これは2つの研究を合わせた筆者の考察で、今回の論文が直接示したものではありません)。

氷河湖は、災害の面でも注目されています。湖をせき止めている土砂(モレーン)が崩れると、大量の水が一気に流れ出す「氷河湖決壊洪水」が起きるからです。英ニューカッスル大学などのチームが2023年に発表した研究によると、氷河湖から50km以内に住む人は世界で約1500万人にのぼり、そのうち約930万人がヒマラヤなどの「アジア高山域」に集中しています。インド、パキスタン、中国、ペルーの4か国で世界全体の半分以上を占めるとされています。

日本への影響:日本の技術も氷河湖の見張りに貢献

日本にも氷河はあります。立山連峰の御前沢(ごぜんざわ)雪渓、剱岳の三ノ窓雪渓と小窓雪渓が、氷が実際に流れていることが確かめられ、2012年に日本雪氷学会の学術誌で「現存する氷河」として認められました。日本の氷河はいずれも小さく、陸で終わるタイプです。

一方、日本は海外の氷河湖の監視にも関わってきました。国の国際共同研究プログラム(SATREPS)では、2008年度に名古屋大学の西村浩一教授(当時)を代表とする「ブータンヒマラヤにおける氷河湖決壊洪水に関する研究」が採択され、宇宙航空研究開発機構(JAXA)も参加しました。日本の地球観測衛星「だいち(ALOS)」の画像を使って危険な氷河湖を洗い出し、現地で水深などを測る取り組みで、2010年11月の時点でブータンの氷河湖の約6割を解析し、予想以上に危険な湖が多い可能性も示されました。

また、氷河がとけた水は海面上昇につながります。世界の氷河の氷の減り方の予測が変われば、海に囲まれた日本の高潮や海岸浸食への備えにも関わってきます。アジアの大河の水源であるヒマラヤの氷河の変化は、日本と結びつきの深いアジアの国々の水や食料にも影響しうる問題です。

意見:「3%の氷河」にこそ目を向けるべき

私は、この研究の一番の価値は「どこを重点的に見張ればいいか」をはっきりさせた点にあると考えます。20万以上の氷河を同じように監視するのは難しいですが、数の上ではわずか3%の氷河が氷の損失の半分以上を担っているなら、そこに観測や予測の力を集めることで、海面上昇や洪水のリスクをより正確に見積もれるはずです。

一方で、気になる点もあります。湖の氷河がなぜ速く氷を失うのか、その仕組みはまだ分かっていません。原因が湖の水にあるのか、氷河の形にあるのかで、今後の予測は大きく変わります。また、データは2019年までのもので、その後の暑い年の影響はまだ反映されていません。今後、氷河湖の増加が続けば、「湖で終わる氷河」の割合も増え、氷の損失がさらに加速するおそれがあると私はみています。日本の衛星観測の技術が、こうした変化を早くとらえる役割を果たすことにも期待したいところです。

まとめ

英バーミンガム大学などのチームは、世界の21万6502個の氷河を「終わり方」で分類し、湖・海・棚氷で終わるわずか3.2%の氷河が、2000〜2019年の氷河の氷の損失の半分以上(年平均約1340億トン)を占めていたことを明らかにしました。とくに湖で終わる氷河は、陸の氷河より約57%速く氷を失っていました。世界で氷河湖が増え続けるなか、氷河の「終わり方」は、これからの気候変動を読み解く新しいカギになりそうです。

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【出典・参考】
https://www.birmingham.ac.uk/news/2026/just-3-of-the-worlds-glaciers-account-for-over-half-of-glacier-ice-loss
https://www.nature.com/articles/s41467-026-78654-y
https://www.earth.com/climate/glacier-lakes-may-be-accelerating-ice-loss-around-the-world/
https://ideas.repec.org/a/nat/natcli/v10y2020i10d10.1038_s41558-020-0855-4.html
https://earth.com/news/glacial-floods-threaten-millions-of-people-worldwide
https://www.jst.go.jp/global/kadai/h2008_bhutan.html
https://tabi-mag.jp/tateyamahyouga/

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