歴史

4000年前のレンガに犬の足跡 トルコ青銅器時代の家から出土

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いまから約4000年前、乾ききっていない粘土のレンガの上を、1匹の犬がトコトコと歩いていきました。その足跡が、火事にも耐えて現代まで残っていたことが分かりました。見つかったのはトルコ西部の青銅器時代の遺跡です。王の墓でも宝物でもない「ただの足跡」ですが、4000年前の暮らしのひとコマをそのまま切り取ったような、ほほえましい発見です。

ニュース本体:焼けた家の壁から出てきた「犬の足あと」

発見を伝えたのは、トルコの文化観光大臣メフメト・ヌリ・エルソイ氏です。2026年10月26日、トルコ西部キュタヒヤ県にある「タヴシャンル・ヒュユク」という遺跡で、犬の足跡が残るレンガが見つかったと発表しました。ヒュユクとは、人が同じ場所に何千年も住み続けた結果、建物の跡が積み重なってできた小高い丘のことです。発掘を率いているのは、ビレジク・シェイフ・エデバリ大学のエルカン・フィダン教授です。

足跡が残っていたのは「日干しレンガ」です。日干しレンガとは、泥や粘土を型に入れて形を作り、窯で焼かずに天日で乾かして固めた建築材料のことです。考古学ニュースサイトのArkeonewsとHeritageDailyによると、犬はレンガがまだ柔らかいうちにその上を歩き、足の形がくっきりと残りました。そのレンガはその後ふつうに家の壁に使われました。

この家は、のちに火事で焼け落ちています。足跡が付いたのは約4000年前、家が火事で壊れたのは約3700年前とされています。壁が崩れたがれきの中から、足跡つきのレンガが見つかったというわけです。エルソイ大臣は、この足跡を「4000年前の暮らしを伝える、小さいけれど注目すべき痕跡」と表現しました。ただし、この犬が家で飼われていたのか、集落を自由に歩き回っていたのかまでは分からないと伝えられています。

独自リサーチ:同じ遺跡では「焼けた脳」も見つかっていた

タヴシャンル・ヒュユクは、アナトリア西部(いまのトルコのアジア側の西部)でも最大級の青銅器時代の集落の一つです。Arkeonewsによると、広さは少なくとも45ヘクタールあり、人が住んでいた歴史は約8000年前までさかのぼります。現在の発掘は2021年から続いています。

この遺跡が世界的に注目されたのは、今回が初めてではありません。トルコの英字紙デイリー・サバハは2023年9月、焼けた建物から見つかった2人の男性の骨に、脳と皮膚の一部が残っていたと報じました。町は紀元前1700年ごろに攻撃を受けて火を放たれ、逃げられなかった人の体が強い熱で炭のようになったことで、かえって残ったと考えられています。皮膚の残りがトルコの発掘で見つかったのは初めてだったといいます。今回の犬の足跡も、この「町を襲った大火」に耐えて残ったものです。悲劇の層の中から、のどかな日常の痕跡が出てきたという対比が印象的です。

実は、粘土に残った動物の足跡は、世界のほかの遺跡でも見つかっています。2014年にはイギリスのレスターで、約2000年前のローマ時代の瓦から、子犬の足跡と、ヒツジかヤギのひづめの跡が見つかったと報じられました。2017年には同じくイギリスのリンカーン近郊で、ローマ時代の瓦に猫の足跡が残っていたことが話題になりました。この瓦も、形を作って日なたで乾かしている間に、猫が上を歩いたと考えられています。2015年にはグロスターで、猫や犬の足跡に加えて、人の靴の跡や子ブタのひづめの跡まで見つかっています。粘土を外で乾かす作り方をしていた時代には、動物たちの「いたずら」はよくあることだったのかもしれません。

犬と人とのつきあいの歴史はさらに古く、日本獣医史学会の小佐々学氏の論文(2013年)によると、犬の家畜化はおよそ1万5000年前というのが定説になってきているとされます。トルコの4000年前の集落で犬が人の家のそばを歩いていたのは、すでに長い共同生活の延長線上にあったわけです。

日本への影響:縄文時代の犬とつながる話

日本にも、人と犬の古いつきあいを示す証拠があります。同じ論文によると、愛媛県久万高原町の上黒岩岩陰(かみくろいわいわかげ)遺跡で見つかった犬の骨は、放射性炭素年代測定で約7300〜7200年前のものと分かり、年代が確定した国内最古の犬の埋葬例とされています。縄文時代の犬(縄文犬)はていねいに葬られていたことから、狩りの相棒や番犬として大切にされていたと考えられています。

トルコの足跡は「埋葬」ではなく、生きて歩いていた瞬間の記録という点がユニークです。日本の考古学でも、土器の表面に残った小さなくぼみ(圧痕)から植物の種や虫を調べる研究が行われてきました。「作っている途中にたまたま付いた跡」は、意図して残された記録とは違い、当時のありのままの暮らしを語ってくれます。作った人の指紋や、そばにいた動物の足跡も、同じように貴重な手がかりになります。

意見:「偶然の記録」こそ、いちばん正直な歴史資料

私は、この発見の価値は「意図していない記録」であることにあると考えます。王の碑文や神殿の壁画は、残したい人が残したい形で作ったものです。一方、レンガに付いた犬の足跡は、だれも残そうと思っていなかった、4000年前のある日のありふれた一瞬です。だからこそ、うそがありません。

また、足跡の付いたレンガをそのまま壁に使ったことにも注目したいところです。作り直さずに使ったのは、手間を惜しんだのか、それとも犬の足跡が気にならないほど身近な存在だったのか。想像をふくらませる余地があります。今後、足跡の大きさから犬の体格を推定したり、遺跡から犬の骨が見つかったりすれば、青銅器時代のアナトリアで犬がどんな役割を担っていたのか、もう一歩くわしく分かるはずです。続報に期待したいと思います。

まとめ

トルコ西部のタヴシャンル・ヒュユク遺跡で、約4000年前の日干しレンガに残った犬の足跡が見つかりました。レンガは家の壁に使われ、約3700年前の火事にも耐えて残りました。ローマ時代の瓦の猫や犬の足跡、日本の縄文犬の埋葬など、人と動物が昔から同じ場所で暮らしてきた証拠は世界中にあります。小さな足跡は、教科書には載らない「ふつうの日」の歴史を、私たちにそっと見せてくれています。

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【出典・参考】
https://www.heritagedaily.com/2026/10/4000-year-old-dog-paw-prints-discovered-in-bronze-age-house-in-turkiye/159791
https://arkeonews.net/4000-year-old-dog-paw-prints-found-at-tavsanli-hoyuk-in-turkiye/
https://www.dailysabah.com/life/history/brain-skin-remnants-discovered-at-bronze-age-settlement-in-turkiye/amp
https://www.livescience.com/44910-ancient-dog-paw-prints-roman-tiles.html
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/cat-left-pawprint-2000-year-old-roman-roof-tile-180963556/
https://jvma-vet.jp/mag/06601/a5.pdf

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