環境

日本の森で「北の木」が減少 全国191か所の長期観測で判明

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日本は、国土の約3分の2が森林におおわれた「森の国」です。その森の顔ぶれが、気づかないうちに少しずつ入れ替わっているかもしれません。全国191か所の森で、長い年月をかけて木を1本1本測り続けてきた記録を分析したところ、寒い気候を好む木が減り、暖かい気候を好む木が増えている傾向が見えてきました。

ニュース本体:全国191か所の「森の健康診断」をまとめて分析

東京農工大学などが2026年10月27日に発表した研究です。大阪公立大学の吉川徹朗准教授、国立環境研究所、森林総合研究所、北海道大学、京都大学、東京大学など、全国の研究者が参加しました。論文は国際学術誌「Forest Ecosystems」に2026年8月20日付でオンライン掲載されています。

研究チームが使ったのは、全国191か所の調査区(毎回同じ場所で調べる区画)で集められた森林のデータです。データの出どころは、環境省の「モニタリングサイト1000」、森林総合研究所や大学の演習林(研究や教育のための大学の森)、日本長期生態学研究ネットワーク(JaLTER)などです。調査期間は平均16.8年で、早いものは1950年代から、最も新しいものは2020年までの記録が含まれています。

分析では、調査区の中の木をすべて測る「毎木調査」のデータから、「胸高断面積合計」の変化を計算しました。これは、人の胸の高さで測った幹の断面積をすべて足し合わせたもので、いわば「森のボリューム」を表す目安です。さらに、木の種類を「北方針葉樹」「落葉広葉樹」「温帯針葉樹」「常緑広葉樹」の4タイプに分け、それぞれの割合がどう変わったかを調べました。

その結果、次のような傾向が見つかりました。

・年平均気温が大きく上がった地域ほど、森のボリュームが増える傾向があった
・年降水量が大きく増えた地域では、逆にボリュームが減る傾向があった(台風などによる被害が関係している可能性)
・古い森(老齢林)の一部ではボリュームが減っていた
・北方針葉樹の割合が減り、落葉広葉樹の割合が増えていた。とくに寒い地域の北方針葉樹林で目立った

研究チームは、暖かい気候を好む樹種が増え、寒い気候を好む樹種が減る「好熱化」が、日本の森で起きている可能性があるとしています。寒い地域の古い森では、森の主役となる木が、北方針葉樹(寒い地域に多い針葉樹)から落葉広葉樹へと置き換わりつつあるとみられます。

独自リサーチ:気温は100年で1.44℃上昇、ブナ林の予測も

背景にある日本の気温の変化を、気象庁のデータで確認してみます。日本の年平均気温は、統計を始めた1898年から2025年までの間に、100年あたり約1.44℃のペースで上がっています。これまでで最も暑かったのは2024年で、1991〜2020年の平均より1.48℃高くなりました。木は一度根を張ると動けないため、こうした変化は何十年もかけて、森の顔ぶれの変化としてあらわれます。

将来についての予測もあります。森林総合研究所のグループは、日本の冷温帯を代表するブナ林について、育つのに適した地域(分布適域)を計算しました。それによると、現在の気候では約6万3000平方キロメートルある適域が、2081〜2100年の気候シナリオ(IPCC第4次評価報告書で使われたもの)では約4割にまで縮むと予測されています。今回の研究は、こうした「将来の予測」に対して、「すでに起きている変化」を実際の観測で示したものといえます。

また、データの柱の一つである環境省の「モニタリングサイト1000」は、2003年度に始まった全国規模の長期観測です。森林ではコアサイト・準コアサイトの48か所で、木の種類や太さ、落ち葉、甲虫、鳥などを調べています。その速報(2022年度)では、本州〜九州でマツ枯れやナラ枯れが目立つこと、シカや病害虫、外来種、温暖化に伴う大型台風の影響が見え始めていることなどが報告されています。森の変化は気温だけでなく、いくつもの要因が重なって起きていることが分かります。

日本への影響:紅葉、林業、そして防災まで

林野庁によると、日本の森林面積は約2505万ヘクタールで、国土の約66%を占めます。森の顔ぶれが変わることは、私たちの暮らしにもさまざまな形で関わってきます。

まず、景色の変化です。北海道や本州の高い山に広がる針葉樹の森は、多くの登山者に親しまれてきました。その主役が落葉広葉樹へ少しずつ入れ替われば、季節ごとの森の色や雰囲気も変わっていくかもしれません。次に、林業や木材への影響です。どの木がどこで育ちやすいかが変われば、長い目で見た森づくりの計画にも関わってきます。さらに、降水量が増えた地域で森のボリュームが減る傾向があったことは、台風や大雨による倒木など、防災の面でも見逃せません。

意見:地味な「測り続ける仕事」が未来を守る

私がこの研究でいちばん大切だと感じたのは、「長く測り続けてきた人たちがいた」という事実です。1本1本の木の太さを、同じ場所で何年、何十年と記録し続けるのは、とても地道な作業です。けれども、その積み重ねがあったからこそ、「北の木が減っている」という変化を、予測ではなく実際のデータで示すことができました。プレスリリースでも、既存の森林調査区が将来の森を予測するための「インフラ(基盤)」として重要になると述べられています。

一方で、気をつけたいのは「暖かい木が増えるなら、森は元気になるのでは」と単純に考えてしまうことです。森のボリュームが増える地域がある一方で、台風などの撹乱(かくらん:森をかき乱す出来事)で減る地域もあり、寒い地域に特有の針葉樹林は逃げ場を失うおそれもあります。こうした観測を、研究者の熱意だけに頼らず、国や自治体が長く支え続けることが必要だと考えます。

まとめ

全国191か所の森の長期データを分析した研究で、日本の森では北方針葉樹が減り、落葉広葉樹が増えるなど、気候変動と関連した変化が起きていることが分かりました。日本の気温は100年あたり約1.44℃上がっており、ブナ林の適域が大きく縮むという予測もあります。身近な山の木々も、静かに入れ替わり始めているのかもしれません。次に森を歩くときは、どんな木が生えているか、少し気にして見てみてはいかがでしょうか。

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【出典・参考】
https://www.tuat.ac.jp/outline/disclosure/pressrelease/2026/20261027_01.html
https://www.tuat.ac.jp/documents/tuat/outline/disclosure/pressrelease/2026/20261027_01.pdf
https://doi.org/10.1016/j.fecs.2026.100531
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn.html
https://www.ffpri.affrc.go.jp/thk/business/arc/past_info/documents/p36-37.pdf
https://www.biodic.go.jp/moni1000/findings/newsflash/pdf/Forests_and_grasslands_no15.pdf
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/30hakusyo_h/all/chap2_1_1.html

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