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ミツバチが野生のハチを追い払う?花の上の意外な競争

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「ミツバチを飼えば自然にやさしい」――そう思っていた人には、少しドキッとする研究です。花の上でミツバチがほかの野生の虫を追い払い、蜜を独り占めしている様子が、イギリスの野外観察で数字として示されました。

2026年10月14日、英国アングリア・ラスキン大学(ARU)の研究チームが、学術誌『エコロジカル・エントモロジー(生態昆虫学)』に論文を発表しました。ミツバチがいる場所では、マルハナバチなどの野生の送粉者(花粉を運んで植物の受粉を助ける虫)が減り、直接の「押しのけ合い」が起きていたといいます。

ニュース本体:花の上の「勝ち・負け・引き分け」を記録

研究を率いたのは、ARUの博士課程の学生ヴィクトリア・バックルさんと、トム・イングス博士です。チームは2年間にわたり、ケンブリッジ周辺の5か所、いずれもミツバチの巣箱から300メートル以内の場所で、合計93時間の観察を行いました。

観察の対象にしたのは、イギリスでよく見られるキイチゴの仲間(ブランブル)とツタ(アイビー)の花です。花に来た虫を、ミツバチ、マルハナバチ、単独性のハチ(群れをつくらず1匹で巣をつくるハチ)、ハナアブ、その他(チョウ、甲虫、スズメバチなど)に分け、虫どうしが出会ったときの結果を「勝ち」「負け」「分け合い」で記録しました。

結果ははっきりしていました。ブランブルでは、ミツバチの密度が2倍になると、マルハナバチの数が14%少なくなっていました。ツタでは、ミツバチが多いほど、単独性のハチやハナアブが少なくなっていました。ほかの送粉者がミツバチを避けた場面は、ブランブルで28%、ツタで36%にのぼります。ミツバチが勝った場面の少なくとも5回に1回は、相手を物理的に押しのけたり追いかけたりしていました。

攻撃的なやりとりのほとんどは、ミツバチの側から仕掛けたものでした。例外は、2001年にイギリスで初めて記録された外来の「アイビービー」という単独性のハチで、自分の餌場を守ってミツバチを追い返すこともあったそうです。

気温との関係も見えてきました。暑いときほど競争が激しくなっていたのです。ハナアブやマルハナバチは涼しい気温のほうが動きやすい一方、ミツバチは逆の傾向があります。研究チームは、温暖化が進むと、ミツバチによる押しのけがさらに強まるおそれがあると指摘しています。

一方でバックルさんは「この研究の目的は養蜂をやめさせることではなく、競争がどう起きるのかを理解することだ」と述べています。イギリスでは登録された養蜂家が2010年の1万9000人から4万7000人へと増えており、ミツバチを飼う人が増えるほど、花の上での競争の起き方を知ることが大切になっています。

独自リサーチ:「ミツバチは家畜」という考え方

実は、ミツバチと野生のハチの関係は、以前から研究者の間で議論されてきました。2018年には『サイエンス』誌に、「ミツバチを守っても野生生物を守ることにはならない」という論考が掲載されています。著者らは、人が飼うミツバチは野生動物ではなく「家畜」として扱うべきだと主張し、ミツバチが巣から最大10キロメートルも飛んで餌を集めることや、病気を野生のハチにうつす可能性を指摘しました。

ただし、ミツバチだけが悪者というわけではありません。2026年9月に英国ブリストル大学が発表した研究では、スコットランドの荒れ地20か所を調べたところ、春のヒツジの放牧が野生の送粉者に与える影響のほうが、ミツバチの巣箱よりもずっと大きかったと報告されています。放牧された場所では、春の花の蜜が63%も少なかったそうです。

つまり、野生の送粉者を減らす原因は一つではなく、土地の使い方や花の量、気温など、さまざまな要素が重なっているということです。今回のARUの研究は、その中で「花の上での直接の押し合い」を数字でとらえた点に新しさがあります。

日本への影響:趣味の養蜂ブームと外来マルハナバチ

日本でも、ミツバチを飼う人は増えています。農林水産省の資料によると、養蜂の飼育戸数は2012年(平成24年)の5934戸から、2024年(令和6年)には1万2061戸へと倍増しました。特に飼育群数が10群未満の小規模な人が3286戸から8635戸に増えており、資料は「趣味養蜂の普及」も背景に挙げています。東京・銀座のビルの屋上でも、2006年から「銀座ミツバチプロジェクト」が続いています。

また日本には、今回の研究と似た構図の「先例」があります。トマトのハウス栽培の受粉用にヨーロッパから輸入されたセイヨウオオマルハナバチが野外に逃げ出して定着し、北海道では在来のマルハナバチと餌や巣の場所を奪い合っていると指摘されてきました。このハチは2006年に「特定外来生物」に指定され、環境省は在来種のクロマルハナバチの利用を勧めています。さらに名古屋大学の研究では、セイヨウミツバチとニホンミツバチの間でウイルスがうつり合う可能性も示されています。

意見:「ミツバチを増やす=環境保護」ではない

今回の研究から学べるのは、「ハチを増やせば自然が豊かになる」という単純な図式は成り立たない、ということだと考えます。ミツバチは私たちの食卓を支える大切な存在ですが、花の蜜は限られた資源です。巣箱を増やせば、同じ花を頼りにする野生のハチやハナアブとの奪い合いが起きるのは自然なことでしょう。

一方で、この研究はイギリスの5か所、2種類の花、93時間の観察にもとづくもので、日本の環境にそのまま当てはまるかは分かりません。日本で同じような「押しのけ合い」を直接測った研究は、まだ見当たりませんでした。都市養蜂が広がる今こそ、日本でも調べる価値があると思います。

養蜂を楽しむ人ができることは、巣箱を置くだけでなく、いろいろな花が咲く場所を増やすことかもしれません。ミツバチと野生のハチが「分け合える」量の花があれば、競争はやわらぐはずです。

まとめ

イギリスの研究で、ミツバチが多い場所ではマルハナバチなど野生の送粉者が減り、花の上で直接追い払う行動も多いことが分かりました。暑いほど競争が激しくなる傾向もあります。日本でも趣味の養蜂が増え、外来マルハナバチの問題も経験しています。ミツバチを大切にしながら、野生のハチの居場所をどう守るか――身近な花壇から考えたいテーマです。

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【出典・参考】
https://www.aru.ac.uk/news/honeybees-exert-flower-power-over-other-species
https://www.eurekalert.org/news-releases/1147684
https://doi.org/10.1111/een.70139
https://www.cam.ac.uk/research/news/think-of-honeybees-as-livestock-not-wildlife-argue-experts
https://www.bristol.ac.uk/news/2026/september/scottish-heathlands-honey-bees-research-.html
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/sonota/attach/pdf/bee-94.pdf
https://www.env.go.jp/nature/intro/4document/species/seiyouoomaruhanabati.html
https://www.akkeshi-town.jp/file/contents/4011/47165/tirashi.pdf
https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/820/03-01seiyouoomaruhana.pdf
https://www.sumitomo.or.jp/pdf/kankyo/09_kankyo_seika/Kadowaki_Tatsuhiko_Seika_093194.pdf
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/2024gin10

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