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衛星に映らない「森の下の火事」 アマゾンで4割多く見つかる

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火事なのに、空から見えない――。いま南米のアマゾンでは、そんな「隠れた火事」が森を焼いています。

NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年10月15日、アマゾンの熱帯雨林で大規模な火災が広がっていると発表しました。しかも、NASAの研究者が衛星データを細かく調べ直したところ、ふだんの監視システムで数えられている火災よりも、およそ4割も多い火が燃えていることが分かったのです。

ニュース本体:煙に包まれたアマゾン、衛星が見落とす火

NASAの地球観測サイト「アース・オブザーバトリー」によると、10月12日にNASAの衛星「アクア」に積まれたセンサー「MODIS(モディス)」が、ブラジル北部のアマゾン流域をおおう厚い煙をとらえました。人口200万人を超える都市マナウスでは、同じ日にPM2.5(髪の毛よりずっと細かい、肺の奥まで入る空気中の粒)の濃度が1立方メートルあたり135マイクログラムを超え、地域の大気質指標で2番目に悪いランクになりました。

背景にあるのは深刻な雨不足です。ブラジル国立気象研究所によると、マナウスの降水量は8月に平年より95%、9月に60%も少なくなりました。火の始まりは、牧草地や畑をきれいにするために人がつけた「野焼き」です。それが燃え広がり、乾ききった森の「林床(りんしょう)」、つまり大きな木の下の落ち葉や低い草木の層を焼き進んでいます。この地域では雷による発火は1%未満で、ほぼすべての火が人の手によるものとされています。

注目すべきは「見えない火」の存在です。林床の火事は炎が低く、上を木々の葉や煙、雲がおおっているため、人工衛星から見つけにくいのです。NASAゴダード宇宙飛行センターで研究するメリーランド大学のシェーン・コフィールド氏は、衛星センサー「VIIRS(ヴィアーズ)」のデータから、通常の検出基準に届かない「火災の候補」を拾い出す方法で分析しました。その結果、アマゾン川中流の都市サンタレン周辺では、NASAの火災情報システム「FIRMS(ファームズ)」の数よりも約40%多い火災が見つかりました。コフィールド氏は「最も煙がひどい日には、衛星での検出がとても少ない。それが正しくないことは分かっている」と話しています。

サンタレン周辺では、少なくとも50〜70の火が制御できないまま燃えていると見られています。火災は雨季が始まる12月から1月ごろまで続く見込みで、11〜12月にはブラジル北部やベネズエラ、ガイアナ、スリナムへ、2027年8〜9月にはアマゾン南部で火災の危険が高まると予想されています。

独自リサーチ:エルニーニョが起こす「火の連鎖」

NASAのダグラス・モートン氏は、今回の火災を「連鎖(カスケード)の2つ目のドミノが倒れた」と表現しています。1つ目のドミノは、すでに8月から火災が起きているインドネシアです。

この「ドミノ」には、しっかりした研究の裏づけがあります。モートン氏らが2017年に学術誌『ネイチャー・クライメート・チェンジ』に発表した論文は、1997〜2016年の衛星データから、エルニーニョ現象(南米ペルー沖の海水温が高くなる現象)の年6回と、ラニーニャ現象(逆に低くなる現象)の年6回を比べました。すると、エルニーニョのときとその後には、熱帯の森の火災による排出量がラニーニャのときより133%も多くなっていました。さらに、火災のピークはまず赤道付近のアジアで8〜10月に起き、翌年には南米北部、中米、アマゾン南部へと、時期をずらしながら移っていくことが示されました。今回NASAが示した今後の予想は、まさにこの順番どおりです。

では、林床の火事は森にどれほどのダメージを与えるのでしょうか。ブラジル国立宇宙研究所(INPE)などのチームは、2015年のエルニーニョのときにマナウスの南東約90キロの湿った森で起きた火災のあとを3年間調べ、英国王立協会の学術誌に発表しました。燃えた森では木などの本数が平均27.3%減り、森にたくわえられた炭素の量(バイオマス)も12.8%減っていました。一方、燃えなかった森はほとんど変わりませんでした。炎は低くても、もともと火に慣れていない熱帯の木々は、幹を焼かれると数年かけて枯れていくのです。

しかも今年のエルニーニョは記録的です。日本の気象庁が10月9日に出した「エルニーニョ監視速報」では、監視海域の9月の海面水温が基準値より4.0℃高く、1997年12月の+3.6℃を上回って観測史上最も大きくなりました。ピークは11〜12月とみられています。モートン氏は、2015年や2023年に焼けた森の多くが再び燃えていて、一度焼けて弱った森はさらに燃えやすくなっていると指摘しています。

日本への影響:暖冬の可能性と、日本の衛星の役割

アマゾンの火事は遠い国の話に思えますが、原因となっているエルニーニョは日本の天気にもかかわります。気象庁の見通しなどによると、この冬は偏西風が南寄りに流れ、日本付近は暖かい空気におおわれやすくなるとみられています。同じく強いエルニーニョだった1997年には、11〜12月に全国的に気温がかなり高くなり、冬の訪れが遅れました。

一方で、日本の技術が熱帯の森を守る役に立っている面もあります。JICA(国際協力機構)とJAXA(宇宙航空研究開発機構)は2016年11月から、「JJ-FAST(熱帯林早期警戒システム)」を運用しています。JAXAの地球観測衛星「だいち2号」に積まれたレーダーは、雲や雨を通して地表を見ることができるため、雨季でも森林伐採を見つけられます。対象は78か国で、約1.5か月ごとに熱帯林の変化をチェックしています。JJ-FASTが見つけるのは主に森が切られた跡で、今回のような林床の火事そのものではありませんが、「雲や煙で見えない場所を見る」という点で、NASAの取り組みとも共通する課題に挑んでいます。

意見:「数え漏れ」を前提に対策を考えるべき

今回のニュースでいちばん重く受け止めたいのは、これまでの衛星による火災の数が「少なめ」だった可能性です。煙がひどい日ほど検出が減るということは、被害が大きいときほど数字が小さく出てしまうということです。火災の統計は、森林保護の政策や温室効果ガスの計算にも使われるので、この見落としは小さな問題ではありません。コフィールド氏の分析結果が、ブラジルの大学やNGOなどでつくる森林監視ネットワーク「マップバイオマス」に提供されるのは、とても意味のある一歩だと考えます。

ただし、40%という数字はサンタレン周辺の分析によるもので、アマゾン全体にそのまま当てはまるかはまだ分かりません。また、「候補」として拾った火の中には、火災でないものが混じる可能性もあります。今後、現地調査などで確かめていく必要があるでしょう。

それでも、火のほとんどが人の手で始まっているという事実は、裏を返せば「人が火を使わなければ防げる」ということです。モートン氏の「今年こそ、何としても燃やすのを避けるべき年だ」という言葉は、科学者からの切実な呼びかけだと感じます。記録的なエルニーニョのなかで、2027年にかけて火災の危険がアマゾン南部へ移っていく可能性があり、この1年が森の将来を左右する分かれ道になるかもしれません。

まとめ

NASAの分析で、アマゾンの一部では通常の監視システムより約40%多い火災が燃えていることが分かりました。木々の下を燃え進む林床の火事は、煙や葉にかくれて衛星から見えにくく、それでいて森に長く残るダメージを与えます。記録的なエルニーニョが続くなか、「見えない火」をどう見つけ、どう防ぐのか。日本の冬の天気ともつながる話題として、今後も注目していきたいと思います。

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熱帯雨林がどんな生き物たちのつながりで成り立っているのかを、研究者がやさしく紹介した本です。林床の火事がなぜ森に大きなダメージを与えるのかを考える手がかりになります。

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アマゾン川流域やインドネシア、そしてエルニーニョが起きる太平洋の位置関係を、手元で確かめられます。「火の連鎖」が赤道沿いに広がる様子をイメージするのにおすすめです。

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【出典・参考】
https://science.nasa.gov/earth/earth-observatory/fires-arrive-in-the-amazon-rainforest/
https://www.sciencedaily.com/releases/2026/10/261016070633.htm
https://research.vu.nl/en/publications/a-pan-tropical-cascade-of-fire-driven-by-el-ni%C3%B1osouthern-oscillat/
https://agencia.fapesp.br/fire-in-wet-area-of-the-amazon-destroys-27-of-trees-in-up-to-three-years-study-finds/36601
https://weathernews.jp/news/202610/090161/
https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/houdou/pdf/elnino202610.pdf
https://www.eorc.jaxa.jp/jjfast/system.html

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