海の底に沈んだクレオパトラゆかりの宮殿から、小さな指輪が見つかりました。そこに刻まれていたのは、700年以上前に姿を消した「世界の七不思議」の一つ、アレクサンドリアの大灯台でした。
2026年10月7日、ヨーロッパ水中考古学研究所(IEASM)は、エジプト・アレクサンドリアの海底遺跡で、大灯台の姿が彫られた青銅製の印章指輪(ハンコとして使う指輪)を発見したと発表しました。エジプト観光・考古省によると、大灯台が刻まれた印章指輪が見つかったのは初めてだといいます。
ニュース本体:沈んだ王宮の島で見つかった指輪
指輪が見つかったのは、アレクサンドリアの東港にあった「アンティロドス島」です。この島はかつて王族の居住区の一部で、プトレマイオス朝の宮殿があった場所。現在は地震や津波などによって海の中に沈んでいます。
調査を率いるのは、フランスの水中考古学者フランク・ゴディオ氏。1992年からこの海域を調べ続けており、1996年からはリヒテンシュタインのヒルティ財団が活動を支援しています。エジプトのシェリフ・ファトヒ観光・考古大臣も調査船を訪れ、指輪を視察しました。
見つかったのは、手紙や容器の封をするとき、粘土やろうに押し当てて使う「印章指輪」です。エジプト考古最高評議会のヒシャム・エル=レイシー事務局長によれば、彫られた灯台の図柄は、2世紀ごろのローマ時代の硬貨に描かれた灯台とよく似ているとのこと。ただし、指輪の正確な年代や持ち主はまだ分かっていません。
ゴディオ氏は「伝説の宮殿から出土したことで、発見の重要性はさらに増す」と述べ、この宮殿が灯台の運営に関わる役所のような役割を持っていた可能性を指摘しています。ただし、これはあくまで一つの仮説として示されているものです。今季の調査では、イシス神殿、アンティロドス島の宮殿、オベリスク(記念柱)の跡、そしてアントニウスゆかりの「ティモニウム」の4か所が対象となりました。
独自リサーチ:大灯台はどんな建物だったのか
アレクサンドリアの大灯台は、紀元前3世紀前半、プトレマイオス朝の時代にファロス島に建てられました。設計者はクニドスのソストラトスと伝えられています。高さははっきりしませんが、100メートルを超えていたと考えられており、当時の人工建造物としては飛び抜けた高さでした。
その名声は言葉にも残っています。フランス語の「phare(ファール)」やイタリア語・スペイン語の「faro(ファーロ)」など、ヨーロッパのいくつかの言葉で「灯台」を意味する単語は、この「ファロス」に由来しています。
しかし大灯台は、1303年と1323年の大地震で崩れ落ちます。1477年には、マムルーク朝のスルタン・カーイトベイが、その跡地に灯台の石材を再利用して要塞を築きました。現在も観光名所として残る「カーイトベイの要塞」です。
海に落ちた灯台の石材は、1995年にフランスの考古学者ジャン=イヴ・アンプルール氏らによって海底で確認されました。それから30年後の2025年には、フランス国立科学研究センター(CNRS)のアレクサンドリア研究センターが中心となり、1個70〜80トンにもなる扉の部材など、22個の大きな石材を海から引き揚げました。石材は3Dスキャンされ、コンピューター上で灯台を組み立て直す「デジタルツイン(仮想の複製)」づくりが進められています。今回の指輪の図柄は、こうした復元作業にとっても、当時の人々が灯台をどう見ていたかを知る手がかりになるかもしれません。
日本への影響:横浜にもやってきた「海のエジプト」
ゴディオ氏の調査は、日本とも縁があります。2009年6月から9月にかけて、横浜のパシフィコ横浜で「海のエジプト展」が開かれ、アレクサンドリアの海底などから引き揚げられた約500点の遺物が展示されました。多くが初公開のものでした。海の底から古代都市の姿がよみがえる調査は、日本の歴史ファンの心もつかんできたのです。
また、灯台という点では日本にも興味深い歴史があります。日本で最初の洋式灯台は、神奈川県横須賀市の観音埼灯台です。フランス人技師ヴェルニーの設計で、明治元年(1868年)11月1日に工事が始まり、翌1869年1月1日に明かりがともりました。この起工日にちなみ、11月1日は「灯台記念日」とされています。大灯台を生んだ地中海の航海技術が、長い時を経て、フランス人技師の手で日本の海を照らすことになったと考えると、歴史のつながりを感じます。
意見:小さな指輪が語る「人々の誇り」
今回の発見でいちばん面白いと感じるのは、巨大な建造物ではなく、手のひらに収まる指輪に灯台が刻まれていたという点です。印章は、持ち主の身分や所属を示す「名刺」のようなもの。そこに灯台を選んだということは、それだけ大灯台が街の象徴であり、人々の誇りだったことを物語っているのではないでしょうか。
一方で、慎重に見るべき点もあります。年代も持ち主も分かっていない現段階で、「宮殿が灯台を管理していた」と結論づけるのは早すぎます。また、灯台を描いた印章自体は、ガラス製の印章など別の形では知られており、「初めて」という表現は指輪に限った話だと考えるのが正確でしょう。今後、同じ地層から出た土器などとの比較で年代が絞り込まれれば、宮殿がいつまで使われていたのかという論争にも新しい材料を提供してくれるはずです。
まとめ
・アレクサンドリアの海に沈んだアンティロドス島の宮殿跡から、大灯台を刻んだ青銅の印章指輪が見つかりました。
・図柄は2世紀ごろの硬貨の灯台に似ていますが、正確な年代や持ち主はまだ不明です。
・大灯台は14世紀の地震で崩れ、2025年には海底の石材22個が引き揚げられてデジタル復元が進んでいます。
・日本では2009年に横浜で「海のエジプト展」が開かれるなど、この調査とのつながりもあります。
七不思議の中で、姿を想像するしかなかった大灯台。海の底から、その姿を伝える新しい「証言者」が現れました。調査はこの後、沈んだ都市カノープスやトニス・ヘラクレイオンがあるアブキール湾に移る予定で、今後の続報にも期待です。
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世界の七不思議(図解・ビジュアル本)
大灯台をはじめ、古代の「七不思議」を図やイラストで紹介する本は、今回のニュースの背景を知るのに最適です。ほかの6つの不思議と比べると、大灯台の特別さがよく分かります。
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今回見つかった指輪と同じく、表面に紋章や図柄を彫った指輪です。古代から続く「ハンコとしての指輪」の文化を、身近なアクセサリーとして楽しめます。
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https://www.thenationalnews.com/news/mena/2026/10/07/new-image-of-an-ancient-wonder-divers-find-ring-showing-lighthouse-of-alexandria-at-sunken-palace/
https://www.labrujulaverde.com/en/2026/10/a-bronze-ring-engraved-with-the-lighthouse-of-alexandria-has-been-found-in-cleopatras-sunken-harbour/
https://archaeology.org/news/2026/10/08/ring-with-lighthouse-of-alexandria-image-recovered/
https://www.businesswire.com/news/home/20250625369793/en/The-Gates-of-the-Alexandria-Lighthouse-Emerge-From-the-Sea
https://www.franckgoddio.org/cn/events/temporary-exhibitions/egypts-sunken-treasures/yokohama/
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/infratourism/infralist/kanagawa/index02.html
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