星が死んだあとに、もう一度惑星が生まれる――。そんな「宇宙の生まれ変わり」を思わせる手がかりが、27年前のハッブル宇宙望遠鏡のデータの中から見つかりました。
2026年10月5日、NASAと欧州宇宙機関(ESA)は、燃え尽きた星「白色矮星(はくしょくわいせい)」のまわりに、星の死後に生まれた「第2世代の惑星」があるかもしれないと発表しました。研究は英国の学術誌『ネイチャー・アストロノミー』に掲載されています。
ニュース本体:27年間解けなかった「謎の線」の正体
舞台は「HS 0209+0832」という白色矮星です。白色矮星とは、太陽くらいの重さの星が燃料を使い果たし、外側のガスを放り出したあとに残る「星の燃えかす」のような天体です。大きさは太陽の1%ほどしかないのに、重さは太陽の6割ほどもある、とても密度の高い星です。
ハッブル宇宙望遠鏡は1999年にこの星を観測していました。星の光を虹のように分けた「スペクトル」(どんな元素があるかを示す光の指紋)には、正体の分からない特徴がおよそ100個も並んでいました。いわば、四半世紀以上も未解決だった「コールドケース(迷宮入り事件)」です。
謎を解いたのは、英国ウォリック大学の博士課程の学生ジェイミー・ウィリアムズさんです。最新の元素データベースと照らし合わせたところ、その多くが「ニオブ」という金属の痕跡と一致しました。ニオブは、これまで調べられた白色矮星では報告されたことのない元素です。すでに運用を終えたNASAの紫外線観測衛星FUSEの過去データでも、ニオブの強い信号が独立に確かめられました。
さらに、NASAの系外惑星探査衛星TESSで4か月間観測すると、星の明るさが周期的に変化していることが分かりました。CNNの報道によると、その周期は4.4日です。
研究チームが考えるシナリオはこうです。白色矮星から約600万キロメートルという、水星と太陽の距離(約5800万キロメートル)よりはるかに近い場所に、木星ほどの大きさのガス惑星がある。生まれたばかりでまだ非常に熱い白色矮星の光が、その惑星の大気をはぎ取り、彗星(すいせい)の尾のようなガスや円盤をつくって星に降り注いでいる――というものです。
では、なぜ「第2世代」なのでしょうか。ニオブのような重い元素は、ふつうの星の中心の核融合ではできず、死にゆく星の極端な環境でつくられると考えられています。つまり惑星の材料にニオブが多いなら、その惑星は「星が死ぬときに吐き出した物質」から生まれた可能性がある、というわけです。共同研究者のウィスコンシン大学マディソン校のニコラス・ストーン氏は、ニオブの存在を星の「死の苦しみ」を示す道しるべだと表現しています。
ただし、ウィリアムズさん自身も「まだ惑星と確定したわけではなく、候補にすぎない」と強調しています。CNNによると、1年以内にX線天文衛星チャンドラでの観測が予定され、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での追観測にも期待がかかっています。
独自リサーチ:「死んだ星のまわりの惑星」の意外な歴史
実は、人類が最初に見つけた太陽系外惑星も「死んだ星」のまわりにありました。1992年、アレクサンダー・ウォルシュチャンとデール・フレイルは、パルサー(超新星爆発のあとに残る、高速で回転する中性子星)「PSR B1257+12」のまわりに惑星があることを発表しました。超新星爆発を生き延びたとは考えにくいため、これらの惑星も爆発後に残った円盤から生まれた「第2世代」ではないかと議論されてきました。
白色矮星のまわりでも、惑星は見つかっています。2020年には、TESSなどの観測で、白色矮星のまわりを1.4日で回る木星サイズの惑星「WD 1856+534 b」が報告されました。2021年には、「重力マイクロレンズ」(手前の星の重力がレンズのように奥の星の光を曲げて明るくする現象)を使って、白色矮星のまわりを回る木星に似た惑星「MOA-2010-BLG-477Lb」が見つかり、『ネイチャー』に発表されています。
ただし、これらは「星が死ぬ前からあって、生き残った惑星」(第1世代)と考えられています。今回のHS 0209+0832が本物なら、白色矮星のまわりで「星の死後に生まれた惑星」が見つかった初めての例になるかもしれません。宇宙ニュースサイトのユニバース・トゥデイも、確認された第2世代惑星はこれまで報告されていないと伝えています。
日本への影響:名古屋大学の観測網と新しい宇宙望遠鏡
先ほど紹介したMOA-2010-BLG-477Lbの名前の「MOA」は、日本とニュージーランドの共同観測プロジェクトの名前です。名古屋大学などが中心となり、ニュージーランドのマウントジョン天文台にある口径1.8メートルの望遠鏡で、重力マイクロレンズ現象を探し続けています。「死んだ星のまわりの惑星」研究には、日本の研究者も深く関わっているのです。
さらに2026年8月30日には、NASAの新しい宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」が打ち上げられました。未知の系外惑星10万個の発見を目指しており、JAXAは長野県の美笹(みささ)深宇宙探査用地上局の54メートルアンテナでデータ受信を分担し、国立天文台のすばる望遠鏡も協調観測を行います。白色矮星のまわりの惑星のような珍しい天体も、今後は日本の設備を通じて見つかっていくかもしれません。
意見:「星の死=終わり」ではない、という視点
今回の発見で興味深いのは、新しい観測ではなく「古いデータの読み直し」から生まれた点です。1999年のデータに答えはずっと書かれていたのに、元素のデータベースが追いついていなかったために読めなかったわけです。宇宙望遠鏡の観測データを長く保存し、誰でも使えるようにしておくことの価値がよく分かります。
一方で、慎重さも必要です。今回の惑星は直接見えたわけではなく、ニオブの痕跡と明るさの変化から「そこにあるはず」と推理されたものです。別の説明が見つかる可能性もあり、チャンドラやウェッブによる追観測の結果を待つべきでしょう。
それでも、太陽もおよそ50億年後には白色矮星になると考えられています。星の最期に新しい惑星が生まれることがあるなら、「星の死」は終わりではなく、次の世代の始まりでもあるのかもしれません。そう考えると、夜空の見え方が少し変わってきます。
まとめ
ハッブル宇宙望遠鏡の1999年のデータに残っていた約100本の謎の線は、白色矮星では初めて報告されたニオブでした。そこから、星の死後に生まれた「第2世代の惑星」候補が浮かび上がっています。まだ確定ではありませんが、チャンドラやウェッブの観測、そして日本も参加するローマン宇宙望遠鏡の時代に、答えが出るかもしれません。
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楽天市場で見る Amazonで見る【出典・参考】
https://esahubble.org/news/heic2613/
https://www.newswise.com/articles/suspected-second-generation-planet-solves-nasa-hubble-cold-case
https://www.sciencedaily.com/releases/2026/10/261007042106.htm
https://www.cnn.co.jp/fringe/35253359.html
https://www.universetoday.com/articles/hubble-spots-a-suspected-second-generation-planet
https://en.wikipedia.org/wiki/PSR_B1257%2B12
https://earthsky.org/space/survivor-planet-wd-1856-b-orbiting-white-dwarf
https://www.utas.edu.au/news/2021/10/14/1174-discovery-offers-a-glimpse-into-the-future-of-our-solar-system/
https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/13844
https://en.wikipedia.org/wiki/Microlensing_Observations_in_Astrophysics
https://www.sakigake.jp/news/article/20260830CO0115/
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